それからよく話をするようになって、わたしと由比ちゃんは急速に仲良くなりました。
(由比ちゃんはそれを知らないようでしたが、)同じ男の子を好きになったふたりですからもともと気が合うのかもしれません。
楽しそうに喬木くんのことを話す由比ちゃんはとても可愛くて、ああ、やっぱりこれでよかったんだと
あたたかな気持ちになるのでした。

 ところが---いつごろからか、由比ちゃんを守る青いトリが一羽また一羽と姿を消していたのです。
以前は確かに十羽にも近いトリたちが彼女のまわりを飛び回っていたというのに。
そして、ある日とうとう最後の一羽になってしまいました。
このトリまでいなくなったらどうしよう、とわたしははらはらしました。これまで一羽のトリにも
守られていない人を見たのは、死んでからすこし経った親戚の叔父さんだけだったのです。
しかし最後のトリは、いっこうにいなくなる気配を見せません。
それにほっとしたわたしは、トリに起こっているもうひとつの変化を見落としていたのです。


 お休みの日、わたしは由比ちゃんと近所に出来たショッピングモールに出かけました。
「あそこのカフェのドーナツ、おいしかったね」
「お持ち帰りできればいいのに…あ、このこと喬木くんには内緒よ?
 なかまはずれだー、って怒るから」
「うん、由比ちゃんとわたしのヒミツね」
くすくすと笑う由比ちゃん。
「ね、でも今度はほんとうに三人で行こ?」
「えー、でもわたしがいたらジャマじゃない?」
「そんなことないよ、喬木くんもひなちゃんがいちばんの友達だから、いないと盛り上がらないっていつも言ってるの」
「しょうがない奴、あいかわらず」
苦笑してみせながら、わたしはそれでも幸せでした。
大通りにさしかかる交差点で信号を待っているとき----わたしは、ふと、奇妙な羽音を聞いた気がして
振り向きました。

由比ちゃんの背に、あの黒い鳥の翼が
ひろがっていたのです。
(-------!? どうして!?)

舞い散る羽根はみずみずしい藍色で、
その中の数枚はまだ空の青のおもかげを
のこした幼羽根でした。

その時わたしはすべてを悟ったのです。

由比ちゃんに憑いている黒い鳥は、あの
奇妙なトリがおとなになった姿……
さいごの一羽の青いトリ。

トリはわたしたちを災厄から
守ってくれているんじゃなかった。
さだめの日まで、ほかの原因で死が訪れぬよう
管理しているだけ…
それは、成鳥になった己の翼で
すみやかに死を運ぶために。




青いトリは、黒い鳥のひなだったんだ。

 そこまで考えたのはほんの一瞬でした。
由比ちゃんの背後に、歩道に猛然と突っ込んで来る大型車の姿をみとめて----
わたしはその場に飛び出し、力の限り彼女を突き飛ばしていました。
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